今回は、フーリエ解析をわかりやすく解説していきます。
難しいイメージが強いフーリエ解析ですが、意味を理解できればそんなに難しくはありません。
計算は少し面倒ですが、イメージを持っているのとそうでないのとでは雲泥の差があると思うので、そこを軸に解説していきます。
フーリエ解析の意味
まずは、歴史をみていきましょう。
フランスの学者フーリエは自身の論文で \( 0≤x≤2π \)の範囲で定義された連続な関数 \( f(x) \)を考えた場合、どのような関数であっても三角関数の足し合わせで表現できると述べました。
これってすごいことですよね。
必要な三角関数を集めてきたらどんな形でも作れるぞ!って言っているわけですよ。
例えば次のような周期関数を考えてみます。
一見すると複雑な関数のように見えますが、
実は三角関数の足し合わせでできているんです。
上の例で示したように、複雑に見えるグラフを簡単な三角関数の和で表現することができているような感じがしますね!
フーリエ解析を行うとはこのように、私たちの生きる時間と空間の世界を周波数の世界として捉えることができるということなのです。
空間軸や時間軸では理解しにくいことでも周波数軸から眺めることで本質的な理解の助けになることがあります。
フーリエ解析の使い方
フーリエ解析は、日常生活の波が関わる場面において使われています。
例えば、携帯電話で通話する際の音源分離があります。
携帯電話では、予め人以外の雑音をフーリエ解析しそれらをカットしています。
そうすることで、周囲が騒がしい場合でも通話相手には人の声だけを届けてくれるのです。
また、パソコンのファイルを圧縮する際にも不必要な周波数部分をカットすることで容量を小さくしています。
このように、フーリエ解析は日常のあらゆる場面で使われています。
もう一つ、フーリエ解析は微分方程式を解く際にも用いられます。
自然界の現象を分析しようとするとき、それは微分方程式で表されることが多いです。
しかし、全て簡単に解けるわけではありません。
直接的に微分方程式を解くことが難しい場合、フーリエ解析を用いることで解けることもあります。
上記のように、フーリエ解析を日常的な場面でイメージしたい人は以下の参考書がオススメです!
フーリエ級数
ここまで、フーリエ解析が日常でどのように役立っているのかを見てきました。
ここからは、実際に数式も見ていきましょう。
まずはフーリエ級数からです。
フーリエ級数とは主に周期関数を扱う際に用いられるものです。
そのため、積分の範囲を周期 \( T \)で計算を行い、①のような式で表される。
$$ f(x)= a_0+\sum_{n=1}^{\infty}(a_n\cos \frac{nπx}{L}+b_n\sin \frac{nπx}{L}) - ① $$
このような式で表される背景にはベクトルの考え方があります。
ベクトル空間では、内積を考える際に2つのベクトルのなす角が90°である時は2つの内積は0になると考えます(数学の計算上もそうなりますね)。
この考え方を関数(ここでは三角関数)にも適用すると考えるのです。
例えば三角関数には、以下の②、③、④の特徴があります。
$$ {\int_{0}^{T} \sin ωt dt} = {\int_{0}^{T} \cos ωt dt} = 0 - ②$$
$$ {\int_{0}^{T} \sin ωt dt \cos ωt dt} = 0 – ③$$
$$ {\int_{0}^{T} \sin mωt \sin nωt dt} = {\int_{0}^{T} \cos mωt \cos nωt dt} = 0 (m≠n) - ④$$
このような特徴はベクトルの内積と非常に似ています。
そのため、このような性質を三角関数の直交性と呼びます。
また \( a_n \)と \( b_n \)も②~④で求めることができます。
$$ a_0 = \frac{1}{T}{\int_{0}^{T} f(t) dt} – ⑤$$
$$ a_n = \frac{2}{T}{\int_{0}^{T} \cosωt dt} – ⑥$$
$$ b_n = \frac{2}{T}{\int_{0}^{T} \sinωt dt} - ⑦$$
フーリエ正弦級数とフーリエ余弦級数
関数は、偶関数と奇関数に分類することができます。
偶関数は、任意の実数 \( x \)に対して \( f(x) = f(-x) \)を満たすものです。
グラフで言うと \( y = f(x) \)のグラフが \( y \)軸に対して対称になっているものです。
例えば \( y = cosx \)のグラフですね。
奇関数は、任意の実数 \( x \)に対して \( f(x) = -f(-x) \)を満たすものです。
グラフで言うと \( y = f(x) \)のグラフが原点に対して対称となっているものです。
例えば \( y = sinx \)のグラフですね。
よって、偶関数の場合は①式の \( sinωt \)の部分が、奇関数の場合は \( cosωt \)の部分を消すことができます。
つまり、フーリエ級数を行う関数が偶関数や奇関数である場合、フーリエ級数は簡単にすることができるのです。
複素フーリエ級数
これまで実数の世界で展開されてきたフーリエ級数を複素数の世界でも考えることにします。
理由は、公式が数学的に美しいものになることと、後のフーリエ変換の発展のために必要だからです。
フーリエ級数の理論で、実数の世界と複素数の世界を結びつけるために有名なオイラーの公式を使います。
オイラーの公式とは⑧式で表されるものであり、数学史上最も美しい公式の1つに数えられています。
$$ e^{iωt} = i \sinωt + \cosωt - ⑧$$
また、三角関数の直交性と同様に \( e^{iωt} \)の直交性を考えます。
$$ {\int_{0}^{T} e^{iωmt} e^{iωnt} dt} = 0(m≠n) – ⑨$$
$$ {\int_{0}^{T} e^{iωmt} e^{iωnt} dt} = T(m≠n) - ⑩$$
上記の性質があるので、複素フーリエ級数は⑪式のように表すことができます。
$$ f(t) = … + c_n e^{-iωnt} + … + c_3 e^{-iω3t} … + …c_0 + … + c_3 e^{iω3t} + … + c_n e^{iωnt} + … - ⑪$$
また、複素フーリエ級数のフーリエ係数は⑫式で表されます。
$$ c_n = \frac{1}{T}{\int_{0}^{T} f(t)e^{-iωnt} dt} – ⑫$$
フーリエ変換
次はお待ちかねのフーリエ変換です。
フーリエ変換は⑬式で表されます。
また⑭式で表される式をフーリエ逆変換と言います。
$$ F(ω) = {\int_{-∞}^{∞} f(t) e^{-iωt} dt} - ⑬$$
$$ f(t) = \frac{1}{2π}{\int_{-∞}^{∞} F(ω) e^{iωt} dt} – ⑭$$
フーリエ変換はフーリエ級数と似たような式になっていますが、フーリエ変換が対象とする関数は定義区間や境界条件がないものです。
そのため、定義区間や境界条件がない場合に威力を発揮します。
また、フーリエ変換(フーリエ級数)をイメージすると次の図のようになります。
フーリエ解析の計算を細かく丁寧に勉強したい人は以下の参考書がオススメです!
まとめ
今回はフーリエ解析について説明しました。
計算等は面倒な部分があるので細かくはやりませんでした。
とりあえずは
時間軸ではなく周波数の軸で波を見てあげると分かりやすくなる
ということです。
何をやっているのかがイメージできれば計算もそこまで苦にはならないないはずです。
ちなみに私は大学生の時にフーリエ変換を習いました。
そのときは、15回全ての授業を用いて「なぜフーリエ変換ができるのか」を教授が説明してくれました。
「大学ってすげーところだな」
なんて思っていました(笑)
単位修得がかかったテスト。
私は講義の内容を勉強して試験に臨みました。
しかし、肝心の試験問題は
「○○をフーリエ変換しなさい」
1問のみでした。
衝撃を受けたテストでした(笑)
「大学ってすげーな」
別の意味で衝撃を受けましたね。
関係ない話しですみません。
今回の内容は、そんな思い出のフーリエ解析についてでした。
もっと深くフーリエ解析を学びたい人は以下の参考書を是非読んでみてください!
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