熱力学第二法則

高校物理
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はじめに

前回の記事では熱力学第一法則について解説しました。

車の燃費を例に、外から与えられた熱量を効率よく仕事に変換することの重要性を述べました。

それではどうすれば効率よく熱量を仕事に変換させることが出来るのでしょうか?

前回の記事でも述べましたが、現代の技術を持ってしても車の燃費は5割も熱量を仕事に返還できていません。

車の燃費が上がれば、皆さんが払うガソリン代も浮きます!

それだけじゃなく、世の中の様々な面で恩恵を受けることでしょう!

そんな効率についての法則が熱力学第二法則です。

熱効率

最初に熱を仕事に変換する「熱機関」について説明します。

熱機関とは高温の熱源から低温の熱源に熱が移動する過程で仕事を取り出す機関のことです。

少し分かりにくいですね。

先ず熱というものは基本的に高温→低温に移動します。

これは当たり前のように思えますが、実は確率で決まっているのです。

最も、低温→高温に熱が流れる確率は本当に低いですが。

熱機関の話に戻ります。

熱機関というものは、高温の熱源が低温の熱源に向けて熱を移動させるときに、その一部を仕事として取り出してくれる機関なのです。

つまり図のようになりますね。

高温物体
熱機関
低温物体

この \( W \) が取り出された仕事です。

これを見ると、低温物体の熱量 \( Q_2 \) が少なければ少ないほど多くの仕事 \( W \) が取り出せそうですよね!

実際にその通りで、技術者は高温→低温へ移動する熱を少なくしようと頑張ってくれています。

そして、どれだけ効率よく仕事を取り出せているのかを表す指標が熱効率です。

熱効率は以下の公式で表すことができます。

$$ e = \frac{W}{Q_1} = \frac{Q_1-Q_2}{Q_1} $$

常識を見ても分かるように \( Q_2 \) が0であれば完璧な熱機関の完成ですね!

ちなみに熱効率は0.1や0.5などで答えることが多いです。

0.1であれば熱効率10%

0.5であれば熱効率50%

といった具合ですね。

ということは、1と表現できれば熱効率100%!

夢の熱機関の完成ですね!

熱力学第二法則

タイトルにある熱力学第二法則について説明します。

これは本やネットで検索をかけると実に色々な表現で定義されています。

しかし、その全てが同じことを言っているので自分が分かりやすい定義を理解できれば大丈夫です!

先ほど熱効率100%の話をしました。

夢のような話の腰を折るようで申し訳ありませんが、

熱力学第二法則の定義は次の通りです。

熱効率100%の熱機関は存在しない。

例えばクラウジウスなんかは上記の熱力学第二法則を以下のように表現しています。

外に何も変化を与えずに、熱を低温から高温へ移すことは不可能

トムソンは次のように述べています。

一つの熱源から熱を受け取り、そのすべてを仕事に変換することは不可能

もう少し格好いい表現をすると

エントロピー増大の法則

色々な表現がありますね。

しかしこのどれもが、熱効率100%の熱機関は実現しないと言っているのです。

この熱効率100%の熱機関のことを

第二種永久機関

なんて呼びます。

この第二種永久機関は第一種永久機関と比べて実現性は高そうな気がしませんか?

外からエネルギーを与えなくても動く機関は作れなくても

与えたエネルギーを100%無駄にせずに動いてくれる機関は作れそうだ!

実際に昔の人たちは第二種永久機関の制作に明け暮れました。

しかし、どう頑張っても成功させることはできなかったんですね。

今では特許庁も第二種永久機関に関する申請は受け付けていません。

今でも第二種永久機関の制作を夢見て、試行錯誤を続けている人がいます。

そういった人たちの中には一目見て嘘だと分かる物や、

一見するとうまく行きそうな予感がする物まで様々です。

特許庁もそういった物に時間はかけていられないのです。

また「水飲み鳥」というおもちゃをご存じですか?

これは実はアインシュタインをも悩ませたおもちゃです。

ずっと動いているので永久機関かと思いきや、ちゃんと仕掛けがあります。

興味があれば調べてみてください。

すみません。話が逸れました。

不可逆変化

熱が絡む話題としては必ず不可逆変化の話が出てきます。

不可逆変化とは読んで字のごとく

自然に逆向きには起こらない変化のことです。

例として、水を入れたビーカーに赤いインクを垂らすことを考えましょう。

垂らされたインクはどんどん拡散していき水全体がピンク色に変化します。

さぁ、この水を放っておいたらインクはいずれ元の状態に戻るでしょうか?

戻りませんよね。人の手が加えられない限りは。

こういうのを不可逆変化と言います。

熱の移動も同様です。

高温→低温に熱がいどうすることはあっても

低温→高温に熱が移動することは日常的にはないですよね。

冷めたコーヒーが周囲の熱を奪って勝手に熱くなるなんてことはありませんよね笑

しかし前にも述べましたが、これは確率的な話です。

高温→低温に熱が移動する確率が異常に高いだけです。

もしかしたら、低温→高温に熱が移動することがあるかもしれません。

しかしその確率は極めて低いです。

例えるなら、サルにキーボードを適当に叩かせて素晴らしい小説が出来るくらいの確率であると言います。

ほとんど0ですよね。

最初にこのことを言い出したのは有名なボルツマンです。

しかし、周囲に認められずに最後は自殺してしまいます。

正しかったのに!

一般に熱が絡んでいるものは不可逆変化だと思ってもらって構いません!

可逆変化

世の中のほとんどが不可逆変化かと思いきや可逆変化もあります。

例えば、振り子の運動です。

可逆変化と不可逆変化を見分けるポイントは逆再生です。

例えば、その現象をビデオに撮ることを想像してください。

撮ったビデオを見ます。

拡散したインクが元に戻ったら違和感を覚えますよね?

しかし、振り子運動を逆再生してもそんなに違和感はないのでは無いでしょうか?

このようにビデオを逆再生して、

違和感があれば不可逆変化

違和感がなければ可逆変化です。

まとめ

以上で熱分野は終了です。

物理基礎の熱はそんなに分量多くないですね!

最後の熱力学第二法則の話は個人的には結構好きな話です。

高校範囲ではありませんが、統計力学などの分野と合わせて勉強すると理解がさらに深まって面白いです!

ココでは熱効率の公式熱力学第二法則の定義をしっかりと押さえておきましょう!

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